黄金色に輝く神宮外苑のイチョウ並木は今日も大勢の人で賑っています。第4土曜日はNHK青山教室の稽古日です。ちょっと早く出かけて外苑のイチョウ並木を歩きました。いつものことながら歩道は人の波です。昔から神社に大きなイチョウが植えてあるのは、火災にみまわれた時イチョウの葉から大量の水が噴出し社を守ったのだと聞いています。燃えにくい木を植えることで二次災害を防ぐということでしょう!また近年ではイチョウ葉に抗酸化作用があると解り、認知症の改善薬・健康食品などにも使われているようです。



数日前のことです。日本橋三越へブラブラショッピングに出かけました。金沢から帰ったので、久しぶりに娘を誘って食事とショッピングよもやま話をかねての道中です。三越本店・新館の中華・千疋屋へも足を延ばしフルーツパフェなど食べて大満足です。ふと三越のベビー用品売り場のメルヘンチックな店内の飾り付けに目がとまり、「布の絵本」を見つけました。
私の子供が幼い頃に(NHK教育テレビ)子供番組を制作している方の奥様との縁ができ、親しくしてもらいました。奥様いわく「東京勤務であった時、主人は子供番組を作っていましたので、ヒントやアドバイスを貰ってこんな絵本を作りましたョ」と私に見せてくださったことがあります。それはそれは素晴らしい作品!今でもハッキリ記憶によみがえります。これはそれとよく似た“布の絵本”なので思わず歓声をあげて買ってしまいました。「自分自身の楽しみのために買ったものですから・・・」と何だか恥ずかしくて 店員さんに思わず「私がお脳を患った時には、この絵本を見てレッスンしたいヮ・・・・!」と冗談をいってみせた、しかし流石にベテラン店員さんは「そんなことアリエマセンョ!」と問答をカワス!その感じのよい応対となんとも云えない品格に、さすが三越のベテランと感じました。作品の色合いも程よいインパクトがあり作りも丁寧でまた購入しやすい価格です。しかし私が若い頃に出合った“布の絵本”はもっと高尚です。もちろん手縫いであり、心温まる印象深いシリーズでした「懐かしいネ」「コレダョ!」と娘と同感し合い、お互いは、しばし、それぞれ思い出へとタイムスリップです。日の落ちるまでブラブラして、銀座まで足を伸ばし、今話題の「ユニクロ銀座店」で打ち止めです。ユニクロの素晴らしい品揃えと品質の向上に感動して、大きな店舗と陳列のありようなどに、近年この店の栄光を感じました。


リンゴや魚はマジックテープで「外す・動くなど」仕掛けの“楽しい絵本です”そしてページ数も豊富でありました。

薄茶席では、蜂須賀家御用「飯塚観松斎」の作品を納めた茶筥を使い小福で一服戴きました。後は愉しい鑑賞会となり、娘の手伝いもあり賑やかな薄茶席でした。紐の飾りもめでたさを表現して“立ち鶴”結びをしています。
茶筥は巴蒔絵見返しに秋埜蒔絵と豪華な茶筥です。振り出しは一富士二鷹三茄子の蒔絵と字行でむらくもにあとなくきえて むれぞとぶの詩「月におみなえし蒔絵」の香合は小さいながらしっかりとした蒔絵で、棗にも負けない描き方です。そしてこの茶筥に、よく似合っている象牙の茶杓瓢透かしはあまり例を見ない作品です。一つ一つの作品が巧みの技で私の宝筥です。松観斎は蜂須賀家の御用ではない作品を制作する場合は「桃葉と」印を記して区別した仕事をしていたようです。現代と同様難しい時代を過ごした職人であったことには間違いはなく作者の面影が偲ばれます。

薄茶席はちょっと力を抜いて、不昧公の茶の湯の五ヶ条を掛けてみました。この書は今は亡き紅雪庵主人「布野鷹太郎」先生が若き私に書いてくださった書です。後に私は表具をして、愉しんでいます。この表具切れは男者の襦袢地で江戸時代の細密な刺繍切れです。おそらく贅沢禁止令の時に豪商の主はこの上には、粋な縞木綿を着て下着に贅をつくしたことでしょう!珍しいものです。
不昧茶の湯心得 ・茶の湯はいかにも綺麗にいさぎよく 寂たる中にも見所のあるを本とす
・時世の移り行きをわきまえず一つの所に足をとめて移行を知らざるものは 生涯の下手と申すなり
・先達の仕置きことは、いずれの流にもかぎるべからず、取りよう能事を我の力にすべき事
・茶道は点前専一にして、意を次ぎにせよ 茶の者は意を専一にして点前を次ぎにせよ 茶道は下手にてもよし数寄者は下手にてはせんなき事なり
・点前は飯椀をとりて飯を喰い、汁椀をとりて 汁を吸い箸を取り置きする如くなるを、成就と申すなり
この言葉は不昧自らの境地を五ヶ条に記した不昧流の真骨頂ともいえる言葉です。

刺繍の切れも茶の湯尽くしです。気の遠くなるような根気な仕事です。

薄茶席のお菓子も水本製です。季節の遠山煎餅・照り葉のアルフェイ糖ふけ加減も良く、食べ頃の嬉しいお菓子でした。

四時間の茶事も和やかに終わり明日からは、通常の稽古日です。まだ外は明るいようです。茶室玄々の灯は消えたものの僅かに、残り香を残しています。


開炉の茶事の待合は、11月桜と初冠雪(はつかんせつ)という花先だけ白い竜胆2種ともに名前がご馳走なお花です。

待合には、元禄時代の埜弁当を飾り秋の風情を愉しみました。

炭点前の本番です。藪ノ内流の炭点前は、黄帛紗をつけることになっています。茶の世界では、陰の気が強いこの月には、陽である火を客に近づけて陰・陽のバランスをとっています。最後には炉縁をロの字に拭いて釜の蓋を点前に切り、懐石の用意をお知らせいたします。

本日の煮物椀は「伊勢海老真千代」味噌も中に詰めてあり素晴らしいメインデッシュです。

めでたき日の焼き物ですから銭屋さんのお勧めで、加賀料理の「唐蒸し焼き」をご用意戴きました。鯛のお腹の中には、卯の花が詰めてあります。婚礼の時は“にらみ鯛”で大きな鯛が用意されるようです。八寸には虫籠を使いみなさまを驚かせました。

主菓子は「亥の子餅」です。亥の子餅は、朝廷では天皇が亥の日に柳の臼で亥の方向を向いてついた餅を亥の子の形を模り錦に包み御料とした慣わしのあるようです。現代でも宮中では、釜を開く時たとう紙に包み配られるようです。茶の風習にもそうした慣わしが残り「玄猪包み」という香合も残されています。

主菓子の「亥の子餅」は水本製です。吉備粉・白玉粉・黒小豆のこし餡で品良く作っています。

本席の掛け物は壬生二位 藤原家隆卿 三首懐紙
・松の戸をおし開けがたの 山の葉に 雲もかからぬ 月をみるかな
・ふるさとのみがきヶ原の はじ紅葉 こころと散らせ 秋のこがらし
・たがために 人のかた糸 よりかけて わが玉の緒の たえんとすらん

醍醐寺懐紙・呂宋の壷飾りなどして開炉の雰囲気も上々です。床の花は雛侘び助・がまずみの名残葉です。

一服濃い茶にて和やかに茶席もほころびます。炭点前の座掃きに入る羽根の扱いも27手で清めます。大変熟練のいる点前です。しかし畳をかすめる羽根の音を聞きながらの亭主の動作は見る人にとっては風流なもののようです。

今週の金沢の天候は温かく汗ばむような日々です。今日も絶好の茶事日和・・・・!今日はお客さまの到着お知らせメールが届きます。今年の炉開きは、日柄も良い文化の日に、親しい友人と炉開きをさせて貰いました。「子歳の三人が揃いましたので、縁起もよく嬉しいヮ」と語り合いながら、しっとりとした気分で一服のお茶を愉しみました。8日・9日は開炉の茶事本番なので私は少し緊張しています。茶事に備えて蹲の周りにも、たっぷり敷き松葉を敷いて、まさに茶のお正月の気分です。松の葉の残り香も移り清々しい雰囲気を和ませています。

今年初めての炭点前をお目だるいことながら努めました。濃茶の刻限には湯もたぎり、一垸の茶をすすりながら“幸せ”である喜びを感じ合いました。藪ノ内流の炭点前は、丁寧な上に難解です。炭点前の起源は、利休と剣仲が埜遊びの帰りに利休の庵に立ち寄り埋火の残る炉中を見て、炭を改め、一垸の茶を振舞ったことから始まりました。そして互いの五感に響き合い、現在の炭点前として伝わったようです。そして茶の湯の文化は奥深くて尽きない学びの心が受け継がれています。